概要
墓じまいとは、既存の墓石を撤去し、墓地の区画を管理者に返還すること。遺骨は別の埋葬先(樹木葬・納骨堂・永代供養・散骨など)に移す。鎌倉新書「第4回改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」によると、墓じまいの主な理由は「次世代への負担軽減」が最多で、承継者不在や遠方で管理が困難といった事情が続く。
墓じまいには、遺骨を移すための改葬許可の取得が法律上必要となる(墓地、埋葬等に関する法律 第5条)。
選択肢・バリエーション
- 墓じまい+樹木葬へ移行: 自然葬を希望する場合。承継者不要のプランが多い
- 墓じまい+納骨堂へ移行: 都市部でアクセスの良い参拝場所を確保したい場合
- 墓じまい+永代供養(合祀墓)へ移行: 費用を抑えたい場合。合祀後は遺骨の取り出し不可
- 墓じまい+散骨: 墓を持たない選択。海洋散骨が一般的
- 墓じまい+別の一般墓へ移行: 近隣の墓地に引っ越す場合
費用の相場
墓じまいの総費用は、墓石の撤去費用・離檀料・移転先の費用の合計となる。
墓石の撤去・区画整地費用
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 墓石の解体・撤去・区画整地 | 20〜50万円程度 |
| 閉眼供養(魂抜き)のお布施 | 3万〜10万円程度 |
撤去費用は墓地の広さ・墓石の大きさ・立地条件(重機が入れるかどうか)によって変動する。お布施の相場についてはお布施・戒名の費用相場を参照。
離檀料(寺院墓地の場合)
寺院墓地の場合、檀家をやめる際に離檀料を求められることがある。金額は寺院との話し合いによるため一律の相場はない。法的な支払い義務はないが、これまでの供養への感謝として納めるもの。
移転先の費用(参考)
| 移転先 | 費用の目安 |
|---|---|
| 樹木葬 | 約67.8万円(平均) |
| 納骨堂 | 約79.3万円(平均) |
| 永代供養(合祀墓) | 5万〜30万円 |
| 散骨(海洋) | 3万〜30万円 |
※ 移転先の費用詳細は各記事を参照。
改葬許可の手数料
市区町村窓口での改葬許可申請は手数料(数百円程度)のみで可能。
手続きの流れ
- 移転先の決定 — 遺骨の新しい納骨先を決め、「受入証明書」を取得する
- 現在の墓地管理者への連絡 — 墓じまいの意向を伝える。寺院墓地の場合は離檀の相談も行う
- 改葬許可の申請 — 現在の墓地がある市区町村に改葬許可申請書を提出し、改葬許可証を取得する
- 閉眼供養(魂抜き) — 宗教的な儀式を行う場合。僧侶に依頼する
- 遺骨の取り出し — 石材店にカロート(納骨室)を開けてもらい、遺骨を取り出す
- 墓石の解体・撤去・区画整地 — 石材店に依頼。墓地を更地に戻して管理者に返還する
- 新しい納骨先への納骨 — 改葬許可証を持参して納骨する
必要書類
- 改葬許可申請書(市区町村の窓口またはウェブサイトで入手)
- 受入証明書(移転先の墓地・霊園から取得)
- 埋葬証明書(現在の墓地管理者が発行)
- 改葬許可証(市区町村が交付。納骨先に提出)
※ 書類の詳細は改葬許可の手続きを参照。
自治体の支援制度
墓じまいに対する直接的な補助金制度を設けている自治体は少ないが、以下の関連制度がある。
- 公営墓地への改葬: 自治体が運営する墓地は民営より使用料が安い場合が多い。移転先として検討する価値がある
- 改葬許可の手数料減免: 一部の自治体では改葬許可の手数料を無料としている
- 生活保護受給者の支援: 生活保護法に基づく葬祭扶助の対象となる場合がある(墓じまい自体は対象外が一般的)
- 空き墓地対策: 一部の自治体では無縁墓の整理事業を実施しており、該当する場合は自治体が撤去費用を負担することがある
注意点・よくあるトラブル
- 離檀料のトラブル: 寺院から高額な離檀料を請求されるケースがある。離檀料に法的な支払い義務はないが、感情的な対立を避けるため、事前に丁寧に相談することが重要
- 石材店の指定: 墓地によっては指定の石材店以外に撤去を依頼できない場合がある。相見積もりが取れないため、事前に確認する
- 合祀後の取り出し不可: 移転先で合祀(他の遺骨と混合)を選んだ場合、後から遺骨を取り出すことはできない
- 親族間の合意: 墓じまいは親族の感情に関わる問題。事前に関係者全員の合意を得ておく
- 改葬許可の取得漏れ: 改葬許可を取得せずに遺骨を移動すると法律違反となる。必ず事前に手続きを行う
海外では、フランスの「concession制度」のように墓地の使用期間が法律で制限(5〜50年のリース制)されているケースがある。墓地を有限の資源として循環させる仕組みであり、墓じまいが社会問題化する日本にとって参考になるモデルといえる(→ フランスの葬儀・埋葬・相続制度)。
調べてみて気づいたこと
墓じまいの費用を調べると、「離檀料」の問題に必ず行き当たる。寺院墓地からの改葬時に寺院から求められる費用だが、法的な支払い義務はなく、金額も寺院ごとにまちまち。トラブルが報告されているケースでは、数十万〜数百万円を請求される例もある。一方で、多くの寺院は常識的な範囲(3万〜20万円程度)の「お気持ち」として対応しているようで、トラブルは全体から見れば少数派だと考えられる。
墓石の撤去費用は1㎡あたり10万〜15万円程度が相場とされるが、公式な統計データが見当たらなかった。石材店によって見積もりが大きく異なる場合があり、複数の見積もりを取ることが推奨される。寺院墓地の場合、石材店が指定されていることもあり、その場合は価格競争が働きにくい。
改葬許可の手続き自体は自治体への書類提出で済むが、「改葬元の管理者の承諾」が実質的なハードルになる場合がある。
出典・公式情報リンク
出典: 鎌倉新書「第4回改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」(2026年3月閲覧)
出典: 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」(2026年3月閲覧)
出典: 鎌倉新書「第16回お墓の消費者全国実態調査(2025年)」(2026年3月閲覧)
調査カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026年3月23日 |
| 調査範囲 | 墓じまいの費用相場・手続き・離檀料・移転先の選択肢 |
| 主な情報源 | 鎌倉新書改葬・墓じまい実態調査、厚生労働省 |
| 未調査項目 | 地域別の撤去費用相場、離檀料の実態調査データ |