改葬の法的な定義
墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)第2条第3項は、改葬を次のように定義している。
- 埋葬した死体を、他の墳墓へ移すこと
- 埋蔵し、または納骨堂に収蔵した焼骨を、他の墳墓または納骨堂へ移すこと
「遺骨を移動する行為すべて」が改葬なのではなく、現在と移転先の状態が定義に当たるかで判断する。墓石の撤去・墓所返還を指す墓じまいと、焼骨等を移す改葬は別の手続である。
改葬と区別する場面
| 場面 | 基本的な整理 |
|---|---|
| 墓地・納骨堂から別の墓地・納骨堂へ移す | 改葬。事前に改葬許可が必要 |
| 火葬後、自宅等で保管していた焼骨を初めて墓地・納骨堂へ納める | 通常は改葬ではない。火葬場が記入して返した火葬許可証を用い、納骨先の管理者へ確認する |
| 墓地・納骨堂から散骨のために取り出す | 散骨は法の改葬先に含まれず、取扱いは自治体で異なる。現在地の自治体と管理者へ確認する |
| 既に納めた焼骨の一部を分けて別の墓地・納骨堂へ納める | 改葬とは別の分骨手続。現在の管理者が交付する証明書を新しい管理者へ提出する |
| 墓石だけを移し、焼骨等を移さない | 墓石工事・墓所返還の問題。焼骨等の改葬とは分けて確認する |
海外で火葬された焼骨などには、厚生労働省通知に基づく特例的な扱いがある。通常の初回納骨と同じと決めつけず、納める墓地・納骨堂と自治体へ確認する。
申請先
墓埋法第5条第2項により、改葬許可を行うのは、死体または焼骨が現に存在する場所の市町村長である。移転先や申請者の住所地ではない。
墓地・納骨堂が横浜市内なら横浜市、文京区内なら文京区というように、現在地の自治体へ申請する。受付部署、郵送・オンライン対応、手数料は自治体ごとに確認する。
国の施行規則が求める内容
墓埋法施行規則第2条は、申請書に記載する事項と添付書類を定めている。
申請書の記載事項
- 死亡者の本籍、住所、氏名、性別
- 死亡年月日
- 埋葬または火葬の場所・年月日
- 改葬の理由・改葬の場所
- 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄、墓地使用者・焼骨収蔵委託者との関係
死産の場合は省令に別の記載事項がある。
全国共通の添付書類
-
現在の墓地・納骨堂の管理者が作成した事実証明書
埋葬、埋蔵または収蔵の事実を証する書面。特別の事情でこれにより難い場合は、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面
-
申請者が墓地使用者等でない場合の書類
墓地使用者等の改葬承諾書、または省令が定める裁判関係書類
-
市町村長が特に必要と認める書類
「受入証明書」「本人確認書類」「戸籍」「移転先の使用許可書」は、すべての申請で国の省令が一律に列挙する添付書類ではない。ただし、3の追加書類や本人確認として自治体が求める場合があるため、申請先の案内に従う。
手続きの流れ
- 現在地と焼骨等を確認する — 墓地・納骨堂の名称、管理者、死亡者の情報、人数を確認する
- 移転先を決める — 受入条件、必要書類、改葬許可証の提出先を確認する
- 現在地の自治体から申請書を入手する
- 墓地・納骨堂の管理者から事実証明を得る
- 申請者と墓地使用者等が異なる場合は承諾書等を用意する
- 自治体が求める追加書類を確認して申請する
- 改葬許可証の交付後、現在の管理者へ提示して取り出す
- 改葬許可証を新しい墓地・納骨堂の管理者へ提出して納める
横浜市の案内では、現在の管理者へ許可証を提示して焼骨を取り出し、許可証は渡さず、新しい墓地・納骨堂の管理者へ提出する流れを示している。
申請書の通数
国の施行規則は、申請書に死亡者ごとの事項を記載するよう求めているが、「1墓所につき1通」「全国一律で1体につき1通」と通数を明記してはいない。自治体の様式と運用を確認する。
例えば文京区は「遺骨1体につき1通」と案内している。一方、別紙の一覧表を使う自治体などもあるため、複数の焼骨等があるときは申請前に人数を伝え、必要な申請書・別紙の数を確認する。
費用と交付日数
改葬許可の手数料、証明書の発行費、郵送方法、交付までの日数は自治体・墓地管理者ごとに異なる。全国一律の費用幅や標準処理日数は示せない。
横浜市は改葬許可証の手数料を無料と案内しているが、これは横浜市の例である。申請先の最新ページで確認する。行政書士等へ依頼する場合も、業務範囲と報酬を個別に確認する。
無許可改葬と罰則
墓埋法第5条第1項は改葬に市町村長の許可を求め、第21条は第5条第1項などへの違反について、2万円以下の罰金または拘留もしくは科料を定めている。ただし、第21条は複数の条文違反を対象とする規定であり、個別の事案で誰にどの罰則が適用されるかを一律に断定することはできない。
移動前に申請先自治体へ確認し、改葬に当たる場合は許可証の交付を受けてから取り出す。
証明を得にくい場合
墓地管理者が不明、古い墓で記録が乏しい、管理者との間で争いがあるなど、通常の事実証明を得にくいことがある。施行規則は「特別の事情」がある場合に、市町村長が必要と認める準ずる書面を認めている。代替書類を自己判断で作るのではなく、具体的な事情と手元資料を申請先へ示して相談する。
出典・公式情報リンク
出典: 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律」(2026年8月閲覧)
出典: 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」(2026年8月閲覧)
出典: 横浜市「改葬(遺骨の移動)の手続き」(2026年8月閲覧)
出典: 文京区「改葬許可申請」(2026年8月閲覧)
出典: 東京都保健医療局「散骨に関する留意事項」(2026年8月閲覧)
出典: 厚生労働省「海外で火葬した焼骨の埋蔵又は収蔵をするための許可について」(2026年8月閲覧)
調査カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026年8月1日 |
| 調査範囲 | 改葬の定義、申請先、申請事項・添付書類、初回納骨・散骨・分骨との区別、罰則 |
| 主な情報源 | 厚生労働省、横浜市、文京区、東京都 |
| 未調査項目 | 全国自治体の様式・手数料・オンライン対応一覧、個別紛争の法的評価 |