概要
被保険者や年金受給者が亡くなった場合、遺族に対して公的年金から給付が行われる制度がある。主な給付は遺族基礎年金、遺族厚生年金、死亡一時金、寡婦年金の4種類。
どの給付を受けられるかは、故人の年金加入状況(国民年金・厚生年金)、遺族の続柄・年齢・収入などの要件によって異なる。いずれも請求しなければ支給されないため、該当する場合は期限内に手続きを行う必要がある。
遺族年金は所得税・住民税の課税対象とならない(非課税)。相続税の課税対象にもならない。
選択肢一覧
4つの遺族年金制度の比較
| 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | 死亡一時金 | 寡婦年金 | |
|---|---|---|---|---|
| 根拠制度 | 国民年金 | 厚生年金 | 国民年金 | 国民年金 |
| 受給できる遺族 | 子のある配偶者、または子 | 配偶者、子、父母、孫、祖父母 | 配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹 | 妻 |
| 支給形態 | 年金(毎年) | 年金(毎年) | 一時金(1回) | 年金(60〜65歳) |
| 請求期限 | 5年 | 5年 | 2年 | 5年 |
受給要件の概要
遺族基礎年金:
- 故人が国民年金の被保険者、または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある
- 保険料納付要件を満たしている(加入期間の2/3以上納付、または直近1年間に未納なし)
- 受給者は「子のある配偶者」または「子」(子は18歳到達年度の末日まで、障害等級1・2級の場合は20歳未満)
遺族厚生年金:
- 故人が厚生年金の被保険者、または被保険者期間中の傷病が原因で5年以内に死亡
- または老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある
- 受給者は配偶者・子・父母・孫・祖父母(優先順位あり)
- 夫・父母・祖父母は55歳以上(支給開始は60歳から)
死亡一時金:
- 故人が第1号被保険者として保険料を36月以上納付している
- 遺族が遺族基礎年金を受給できない場合に支給
- 寡婦年金との併給不可(どちらかを選択)
寡婦年金:
- 故人(夫)の第1号被保険者としての保険料納付済期間と免除期間の合計が10年以上
- 婚姻期間が10年以上ある妻
- 妻が60〜65歳の期間に支給
- 死亡一時金との併給不可(どちらかを選択)
費用の相場
遺族年金の請求手続きに費用はかからない。以下は受給できる金額の目安。
遺族基礎年金の支給額(2026年度・2026年4月分から)
| 受給者 | 年額 |
|---|---|
| 子のある配偶者(子1人) | 847,300円 + 243,800円 = 1,091,100円 |
| 子のある配偶者(子2人) | 847,300円 + 487,600円 = 1,334,900円 |
| 子のある配偶者(子3人) | 847,300円 + 487,600円 + 81,300円 = 1,416,200円 |
上表は1956年4月2日以後生まれの配偶者の基本額847,300円を使用。1956年4月1日以前生まれの配偶者の基本額は844,900円。子の加算は第1子・第2子が各243,800円、第3子以降が各81,300円。
遺族厚生年金の支給額
故人の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4が原則として支給される。金額は加入期間と平均標準報酬額によって異なる。300月みなしは、厚生年金加入中の死亡、加入中に初診日がある傷病による初診日から5年以内の死亡、1・2級の障害厚生年金受給者の死亡に適用される。老齢厚生年金の受給資格を満たした方の死亡では実際の被保険者期間で計算する。
中高齢寡婦加算: 一定の要件を満たす40歳以上65歳未満の妻に年額635,500円が加算される(2026年度)。
死亡一時金の支給額
| 保険料納付月数 | 支給額 |
|---|---|
| 36月以上180月未満 | 120,000円 |
| 180月以上240月未満 | 145,000円 |
| 240月以上300月未満 | 170,000円 |
| 300月以上360月未満 | 220,000円 |
| 360月以上420月未満 | 270,000円 |
| 420月以上 | 320,000円 |
付加保険料を36月以上納付していた場合は、上記に8,500円が加算される。
寡婦年金の支給額
故人(夫)が受け取るはずだった老齢基礎年金額の3/4。60歳から65歳になるまでの期間に支給される。
手続きの流れ
遺族基礎年金・遺族厚生年金の請求
- 受給資格の確認: 故人の年金加入状況と遺族の要件を確認する。年金事務所に相談すると正確な情報が得られる
- 必要書類の準備: 下記の書類一覧を参照
- 請求書の提出: 遺族基礎年金は市区町村窓口または年金事務所、遺族厚生年金は年金事務所に「年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)」を提出
- 審査・決定: 日本年金機構で審査が行われ、決定後に年金証書等が送付される。処理状況や不足書類により期間は異なる
- 受給開始: 偶数月に2か月分が振り込まれる
死亡一時金・寡婦年金の請求
- 受給資格の確認: 死亡一時金は、故人の死亡により遺族基礎年金を受けられる遺族がいるときは支給されない。寡婦年金には同じ前提条件はなく、固有の要件を確認する
- 死亡一時金と寡婦年金の比較: 両方の要件を満たす場合はどちらかを選択する。総受給額を比較して選ぶのが合理的
- 請求書の提出: 市区町村窓口または年金事務所に請求書を提出
必要書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 年金請求書 | 年金事務所または日本年金機構のウェブサイトで入手 |
| 故人の年金手帳・基礎年金番号通知書 | 基礎年金番号がわかるもの |
| 戸籍謄本 | 故人との続柄を確認するため |
| 世帯全員の住民票の写し | マイナンバーの記載があれば省略可能な場合あり |
| 故人の住民票の除票 | — |
| 請求者の収入に関する書類 | 所得証明書、課税証明書など |
| 死亡診断書のコピー | または死体検案書のコピー |
| 振込先の金融機関の通帳 | 請求者名義のもの |
状況に応じて追加書類が必要な場合がある。事前に年金事務所に確認することが望ましい。
請求期限
| 給付の種類 | 請求期限(時効) |
|---|---|
| 遺族基礎年金 | 死亡日の翌日から5年 |
| 遺族厚生年金 | 死亡日の翌日から5年 |
| 死亡一時金 | 死亡日の翌日から2年 |
| 寡婦年金 | 死亡日の翌日から5年 |
期限を過ぎると請求権が消滅するため、早めの手続きが重要となる。死後の手続き全体の流れは死後手続きのタイムラインを参照。
自治体の支援制度
遺族年金は国の制度であり、自治体独自の上乗せ給付は一般的にない。ただし以下の窓口が利用できる。
- 市区町村の年金窓口: 国民年金の死亡一時金・寡婦年金は市区町村窓口でも請求手続きが可能
- 年金事務所: 遺族厚生年金の請求、受給資格の相談は年金事務所が窓口となる。全国の年金事務所は日本年金機構のウェブサイトで確認できる
- 年金相談ダイヤル: 日本年金機構が電話相談を受け付けている(ねんきんダイヤル 0570-05-1165)
注意点・よくあるトラブル
- 請求しないと支給されない: 遺族年金は自動的に支給されるわけではない。遺族が自ら請求手続きを行う必要がある。特に死亡一時金は請求期限が2年と短い
- 死亡一時金と寡婦年金の選択ミス: 両方の要件を満たす場合は、受給総額を比較して選択する必要がある。寡婦年金は60〜65歳の5年間受給できるため、総額では寡婦年金のほうが大きくなることが多い
- 内縁関係でも受給できる場合がある: 事実上の婚姻関係(内縁関係)にあった場合でも、遺族年金を受給できることがある。ただし、証明書類の準備が複雑になる
- 再婚すると失権する: 遺族年金の受給者が再婚した場合(事実婚を含む)、受給権を失う
- 65歳以降の併給調整: 65歳以降に自分の老齢基礎年金を受給する場合、遺族厚生年金との併給調整が行われる。自分の老齢厚生年金が優先され、遺族厚生年金は差額分のみ支給される
- 未支給年金の請求: 故人が受け取っていない年金(死亡月分まで)がある場合、遺族が「未支給年金」として別途請求できる。請求期限は5年
※ この記事は法的助言ではありません。具体的な受給要件や手続きは年金事務所にご相談ください。
調べてみて気づいたこと
遺族年金は「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」「寡婦年金」「死亡一時金」の4種類があるが、受給要件がそれぞれ異なり、全体像の把握が難しい制度だと感じた。特に、遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」に限定されており、子がいない配偶者は受給できない。
現行の遺族厚生年金は、30歳未満の子のない妻が5年間の有期給付となり、夫には55歳以上(原則60歳から支給)の要件がある。2025年6月成立の年金制度改正法により、2028年4月1日から、子のない60歳未満の配偶者を原則5年間の有期給付とする見直しが段階的に行われる。既受給者、60歳以後に受給権が発生する方、18歳年度末までの子を養育する方、2028年度に40歳以上となる女性などは今回の有期化の影響を受けない。
死亡一時金(12万〜32万円)と寡婦年金は要件が異なる。両方の要件を満たす場合はどちらか一方の選択となるため、個別の加入記録・受給見込額を年金事務所で確認する。
出典・公式情報リンク
- 出典: 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」(2026年8月閲覧)
- 出典: 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(2026年8月閲覧)
- 出典: 日本年金機構「死亡一時金」(2026年8月閲覧)
- 出典: 日本年金機構「寡婦年金」(2026年8月閲覧)
- 出典: 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」(2026年8月閲覧)
- 出典: 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」(2026年8月閲覧)
調査カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026-08-01 |
| 調査範囲 | 遺族基礎年金・遺族厚生年金・死亡一時金・寡婦年金の受給要件・2026年度額・手続き・2028年施行予定の遺族厚生年金見直し |
| 主な情報源 | 日本年金機構、厚生労働省 |
| 未調査項目 | 遺族年金の受給者統計、障害年金受給者の死亡時の取扱い、在外邦人の遺族年金請求手続き |