概要
相続税は、亡くなった方(被相続人)の財産を相続や遺贈によって取得した場合に、その財産の価額に基づいて課される税金。
課税価格の合計額が基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)以下であれば、原則として相続税はかからず申告も不要となる。国税庁の令和6年分(2024年)統計では、相続税の課税対象となった被相続人は全死亡者の10.4%。詳しくは相続税の基礎控除、実際に払う人は何%か調べてみたを参照。
相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内。相続手続き全体のタイムラインは相続の基本手続きを参照。
選択肢一覧
相続税には複数の控除・特例制度がある。これらを正しく適用することで、税負担を軽減できる場合がある。
主な控除・特例制度
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 基礎控除 | 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者の取得額が1億6,000万円または法定相続分のいずれか大きい額まで非課税 |
| 小規模宅地等の特例 | 居住用宅地330m²まで80%減額、事業用宅地400m²まで80%減額 |
| 生命保険金の非課税枠 | 500万円 × 法定相続人の数 |
| 死亡退職金の非課税枠 | 500万円 × 法定相続人の数 |
| 未成年者控除 | (18歳 − 相続時の年齢)× 10万円 |
| 障害者控除 | (85歳 − 相続時の年齢)× 10万円(特別障害者は20万円) |
生命保険金の非課税枠の詳細は生命保険・医療保険の手続きも参照。
生前対策
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 暦年贈与 | 年間110万円の基礎控除。相続開始前贈与の加算期間は2024年1月1日以後の贈与から段階的に3年から7年へ延長 |
| 相続時精算課税制度 | 累計2,500万円まで贈与税非課税(2024年1月以降、年110万円の基礎控除を新設) |
費用の相場
相続税の速算表
相続税の税率は、各相続人の法定相続分に応ずる取得金額に対して以下のとおり適用される。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | — |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
計算例
前提: 遺産総額8,000万円、法定相続人は配偶者と子2人の計3人
- 基礎控除: 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
- 課税遺産総額: 8,000万円 − 4,800万円 = 3,200万円
- 法定相続分で按分:
- 配偶者(1/2): 3,200万円 × 1/2 = 1,600万円
- 子A(1/4): 3,200万円 × 1/4 = 800万円
- 子B(1/4): 3,200万円 × 1/4 = 800万円
- 速算表で各人の税額を算出:
- 配偶者: 1,600万円 × 15% − 50万円 = 190万円
- 子A: 800万円 × 10% = 80万円
- 子B: 800万円 × 10% = 80万円
- 相続税の総額: 190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円
- 実際の取得割合で配分(ここでは法定相続分どおりと仮定):
- 配偶者: 350万円 × 1/2 = 175万円
- 子A: 350万円 × 1/4 = 87.5万円
- 子B: 350万円 × 1/4 = 87.5万円
- 配偶者の税額軽減を適用: 配偶者の取得額4,000万円は1億6,000万円以下のため、配偶者の相続税は0円
- 最終的な納税額: 子A 87.5万円 + 子B 87.5万円 = 175万円
税理士に依頼する場合の費用
税理士報酬に全国一律の公定価格はない。遺産総額だけでなく、土地・非上場株式の評価、相続人の数、申告期限までの期間などで変わるため、業務範囲と追加報酬の条件を明記した個別見積もりを確認する。
手続きの流れ
相続税の計算ステップ
- 遺産総額の算出: プラスの財産(預貯金、不動産、有価証券、暗号資産、死亡保険金などのみなし相続財産)の合計から、非課税財産、債務(借入金、未払い税金など)、葬式費用を差し引く。暗号資産の評価方法はデジタル遺産(暗号資産)の相続を参照
- 基礎控除額の計算: 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
- 課税遺産総額の算出: 遺産総額 − 基礎控除額(0以下なら申告不要)
- 法定相続分で按分: 課税遺産総額を各法定相続人の法定相続分で按分する(実際の分割割合ではなく法定相続分を使う)
- 速算表で各人の税額を算出: 上記の速算表を適用する
- 相続税の総額を算出: 各人の税額を合計する
- 実際の取得割合で配分: 相続税の総額を、実際に財産を取得した割合で各人に配分する
- 各種控除を適用: 配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除などを適用する
申告に必要な書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 相続税の申告書 | 国税庁のWebサイトからダウンロード可 |
| 被相続人の戸籍謄本一式 | 出生から死亡まで |
| 相続人全員の戸籍謄本 | — |
| 遺産分割協議書の写し | 相続人全員の署名・実印 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | — |
| 不動産の登記事項証明書 | — |
| 固定資産税評価証明書 | — |
| 預貯金の残高証明書 | 死亡日時点のもの |
| 有価証券の評価明細書 | — |
| 生命保険金の支払通知書 | — |
提出先と期限
- 提出先: 被相続人の住所地を管轄する税務署
- 期限: 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内
- 納付方法: 金銭一括納付が原則。困難な場合は延納(年賦払い)や物納の制度がある
自治体の支援制度
相続税に関する自治体の直接的な補助金制度はない。ただし、以下の無料相談窓口を活用できる。
- 税務署の無料相談: 各税務署で事前予約制の相談を受け付けている。相続税の計算方法や申告手続きについて相談できる
- 税理士会の無料相談: 各地の税理士会が定期的に無料相談会を実施している
- 自治体の無料法律相談: 税金に関する一般的な相談にも対応している場合がある
- 法テラス: 収入・資産が一定以下の方を対象に、専門家費用の立替制度を提供
注意点・よくあるトラブル
- 申告期限の超過: 10か月の申告期限を過ぎると延滞税の対象となる。法定申告期限が2024年1月1日以後の場合、税務調査等による決定後の無申告加算税は、納付税額50万円以下の部分15%、50万円超300万円以下の部分20%、300万円超の部分30%。調査通知前の自主申告は5%など、申告時期により税率が異なる
- 配偶者控除・小規模宅地等の特例は申告が必須: これらの制度を適用した結果、税額が0円になる場合でも、相続税の申告書を提出しなければ適用を受けられない
- 名義預金の指摘: 被相続人が家族名義で管理していた預金は、税務調査で相続財産と認定される可能性がある。名義ではなく「実質的に誰の財産か」で判断される
- 暦年贈与の加算期間の変更: 2024年1月1日以後の贈与から、相続開始前贈与の加算期間が段階的に3年から7年へ延長された。相続開始が2026年12月31日までなら従来どおり3年、2027年1月1日から2030年12月31日までは2024年1月1日から相続開始日まで、2031年1月1日以後は7年が対象。相続開始前3年を超える部分は、その期間の贈与額合計から100万円を控除する
- 相続時精算課税は撤回できない: 一度選択すると、その贈与者からの贈与について暦年贈与に戻すことはできない。2024年1月以降は年110万円の基礎控除が新設されたが、選択は慎重に判断する必要がある
- 小規模宅地等の特例の要件: 居住用宅地の80%減額を受けるには、配偶者が取得するか、同居親族が引き続き居住する等の要件を満たす必要がある。要件は細かく、該当するか判断が難しい場合は専門家に相談する。相続した空き家の売却時に使える3,000万円特別控除については「実家じまい・空き家の費用と手続き」を参照
- 遺産分割が未了の場合: 申告期限までに遺産分割が確定しない場合、法定相続分で取得したものとして一旦申告し、分割確定後に更正の請求または修正申告を行う。この場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は原則として適用できない(「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、分割確定後に適用可能)
※ この記事は法的助言ではありません。具体的な申告手続きや節税対策については税理士にご相談ください。遺言書の作成については遺言書の種類と書き方を参照。
調べてみて気づいたこと
相続税の基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を計算すると、配偶者と子2人の場合で4,800万円。国税庁の令和6年分統計では、相続税の課税対象となった被相続人は全死亡者の10.4%で、初めて1割を超えた。全国値は目安であり、財産構成や地域の地価によって個々の申告要否は異なる。
一方で、2015年の基礎控除引き下げ(5,000万円+1,000万円×人数 → 3,000万円+600万円×人数)以降、課税対象者は約2倍に増えた。特に都市部の不動産を相続する場合は基礎控除を超えやすく、地方と都市部で体感が異なる。
配偶者の税額軽減(1億6,000万円まで非課税)は強力だが、一次相続で配偶者に集中させると二次相続の税負担が重くなるという構造は、税理士に相談せずに気づくのは難しいと感じた。
出典・公式情報リンク
- 出典: 国税庁「No.4152 相続税の計算」(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「No.4155 相続税の税率」(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」の一部改正(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」(2026年8月閲覧)
- 出典: 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2026年8月閲覧)
- 出典: 政府広報オンライン「相続税はいくらから?基礎控除とは?」(2026年8月閲覧)
- 出典: e-Gov法令検索「相続税法」(2026年8月閲覧)
調査カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026-08-01 |
| 調査範囲 | 相続税の計算方法、速算表、基礎控除、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、暦年贈与・相続時精算課税の2024年改正、無申告加算税、令和6年分申告事績 |
| 主な情報源 | 国税庁、政府広報オンライン、e-Gov法令検索 |
| 未調査項目 | 事業承継税制、農地・非上場株式の納税猶予、物納・延納の詳細手続き、相続税の2割加算の対象者、家族信託の税務上の取扱い |