概要
家族が亡くなった際、生命保険の死亡保険金や入院給付金の請求、公的医療保険の高額療養費の申請など、保険に関する複数の手続きが発生する。
死亡保険金の請求権には3年の消滅時効がある(保険法第95条)。高額療養費の申請期限は診療月の翌月1日から2年間。いずれも期限を過ぎると請求できなくなる可能性があるため、早めの手続きが重要となる。
故人がどの保険に加入していたか不明な場合は、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用して契約の有無を確認できる(利用料3,000円、2026年4月以降はWeb 6,000円・書面7,000円に改定予定)。
選択肢一覧
死亡時に関連する主な保険・制度は以下のとおり。
- 生命保険(死亡保険金): 民間の生命保険会社から受取人に支払われる。契約内容に基づく
- 医療保険(入院給付金・手術給付金): 故人が入院・手術していた場合に請求可能。受取人が故人本人の場合は相続人が請求する
- 高額療養費制度: 公的医療保険(国民健康保険・健康保険)の制度。1か月の医療費の自己負担額が限度額を超えた場合に差額が払い戻される
- 葬祭費・埋葬料: 国民健康保険加入者には「葬祭費」、健康保険加入者には「埋葬料」(5万円)が支給される。詳細は各葬儀形式の記事(一般葬、家族葬など)を参照
- 遺族年金: 遺族基礎年金・遺族厚生年金・死亡一時金・寡婦年金は死亡保険金とは別の公的給付。詳細は遺族年金・死亡一時金・寡婦年金の手続きを参照
- 団体信用生命保険(団信): 住宅ローン契約に付帯する保険。被保険者の死亡によりローン残高が弁済される
- 生命保険契約照会制度: 生命保険協会が運営する制度。故人の保険契約の有無を照会できる
費用の相場
この記事では費用を支払う場面よりも、保険金や給付金を「受け取る」手続きが中心となる。以下に主な金額の目安を整理する。
死亡保険金の非課税枠
死亡保険金は相続税法上「みなし相続財産」として課税対象となるが、以下の非課税枠がある(相続税法第12条)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 非課税限度額 | 500万円 × 法定相続人の数 |
例:法定相続人が3人の場合、1,500万円までは非課税。
死亡保険金の課税関係の詳細は相続の基本手続きおよび相続税の計算方法と節税対策も参照。
高額療養費制度の自己負担限度額(70歳未満・現行)
| 区分 | 所得要件(標準報酬月額) | 自己負担限度額(月額) | 多数回該当 |
|---|---|---|---|
| ア | 83万円以上 | 252,600円 +(総医療費 − 842,000円)× 1% | 140,100円 |
| イ | 53万〜79万円 | 167,400円 +(総医療費 − 558,000円)× 1% | 93,000円 |
| ウ | 28万〜50万円 | 80,100円 +(総医療費 − 267,000円)× 1% | 44,400円 |
| エ | 26万円以下 | 57,600円 | 44,400円 |
| オ | 住民税非課税 | 35,400円 | 24,600円 |
「多数回該当」は、直近12か月間に3回以上の高額療養費の支給を受けた場合の4回目以降の限度額。
生命保険契約照会制度の利用料
| 利用区分 | 費用 |
|---|---|
| 平時利用(Web) | 3,000円(2026年4月以降 6,000円) |
| 平時利用(書面) | 3,000円(2026年4月以降 7,000円) |
| 災害時利用 | 無料 |
手続きの流れ
死亡保険金の請求手続き
- 保険会社への連絡: 保険証券に記載の連絡先(コールセンター等)に被保険者の死亡を連絡する。保険証券が見つからない場合でも、氏名・生年月日で契約を照会できる
- 必要書類の準備:
| 必要書類 | 備考 |
|---|---|
| 保険金請求書 | 保険会社所定の書式 |
| 死亡診断書(写し) | 死亡届提出時に取得。コピーを多めに準備 |
| 被保険者の戸籍謄本(除籍) | 死亡の事実を証明 |
| 受取人の本人確認書類 | 運転免許証等 |
| 受取人の戸籍謄本 | 被保険者との続柄を証明 |
| 保険証券 | 紛失の場合は保険会社に相談 |
- 書類の提出: 保険会社に必要書類を郵送または窓口で提出する
- 保険金の支払い: 書類到着後、通常5〜10営業日程度で指定口座に振り込まれる
入院給付金の請求手続き
故人が入院・手術をしていた場合、医療保険の入院給付金・手術給付金を請求できる。受取人が故人本人の場合は、相続人が代わりに請求する。入院給付金は非課税となる(相続税法基本通達)。
高額療養費の申請手続き
- 申請先の確認: 国民健康保険の場合は市区町村の窓口、健康保険(協会けんぽ・健保組合)の場合は各保険者に申請する
- 申請: 診療月の翌月以降に申請可能。申請期限は診療月の翌月1日から2年間
- 払い戻し: 申請から通常3か月程度で指定口座に振り込まれる
- 限度額適用認定証: 事前に「限度額適用認定証」を取得し医療機関の窓口で提示すれば、窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられる
生命保険契約照会制度の利用手順
- 生命保険協会のWebサイトからオンラインで申請(または郵送)
- 必要書類(死亡診断書、戸籍謄本、申請者の本人確認書類など)を提出
- 利用料を支払う
- 約2〜3週間で結果通知。契約が見つかった保険会社名が通知される(契約内容の詳細は各保険会社に問い合わせる)
自治体の支援制度
高額療養費制度
高額療養費は公的医療保険の制度であり、国民健康保険加入者の場合は市区町村が窓口となる。自己負担額が上記の限度額を超えた場合に差額が支給される。
多くの自治体では、高額療養費の対象となる方に申請勧奨の通知を送付している。通知が届いたら、記載された窓口で申請手続きを行う。
葬祭費の支給
国民健康保険加入者が亡くなった場合、葬儀を行った方に葬祭費が支給される。金額は自治体によって異なる(例:東京23区は7万円、横浜市・大阪市・名古屋市は5万円、札幌市は3万円)。申請期限は葬儀を行った日の翌日から2年以内。
各自治体の詳細は地域別ページ(新宿区、世田谷区、横浜市、大阪市、名古屋市、札幌市)を参照。
注意点・よくあるトラブル
- 請求期限(3年)の見落とし: 保険金の請求権は保険法第95条により3年で消滅時効にかかる。3年を超えても保険会社が時効を援用しない限り請求可能な場合もあるが、早めの手続きが望ましい
- 保険証券の紛失: 保険証券がなくても、保険会社に氏名・生年月日を伝えれば契約を照会できる。複数の保険契約がある場合は、生命保険契約照会制度の利用も検討する
- 課税関係の違い: 死亡保険金は「契約者・被保険者・受取人」の関係によって課税される税金の種類が異なる
| 契約者 | 被保険者 | 受取人 | 課税される税金 |
|---|---|---|---|
| 夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
| 妻 | 夫 | 妻 | 所得税(一時所得) |
| 妻 | 夫 | 子 | 贈与税 |
- 高額療養費の立て替え負担: 事後申請の場合、いったん窓口で全額(3割負担分)を支払い、後日差額が払い戻される。高額になる場合は「限度額適用認定証」を事前に取得することで窓口負担を軽減できる
- 複数の保険契約の確認漏れ: 勤務先の団体保険、住宅ローンの団体信用生命保険など、個人で契約した保険以外にも保険金が請求できる場合がある
調べてみて気づいたこと
生命保険金の請求には3年の時効がある(保険法第95条)。意外と知られていないが、保険証券の所在がわからない場合、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用すると、加入している保険会社を一括で照会できる。照会手数料は1回3,000円。この制度は2021年に始まった比較的新しいもの。
高額療養費制度は、自己負担限度額を超えた医療費が後から還付される仕組みだが、申請しないと返ってこない。入院が長期化した場合、限度額適用認定証を事前に取得しておくと、窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられる。この「事前」と「事後」の違いで、一時的な立て替え負担が大きく変わる。
故人の医療費は、亡くなった年の医療費控除として相続人の確定申告に含められる場合がある。準確定申告との関係もあり、税務面では整理が必要。
出典・公式情報リンク
- 出典: 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」(2026年3月閲覧)
- 出典: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年3月閲覧)
- 出典: 協会けんぽ「高額療養費」(2026年3月閲覧)
- 出典: e-Gov法令検索「保険法」(2026年3月閲覧)
- 出典: 生命保険協会「生命保険契約照会制度」(2026年3月閲覧)
- 出典: 生命保険文化センター「高額療養費制度について知りたい」(2026年3月閲覧)
調査カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026-03-24 |
| 調査範囲 | 死亡保険金の請求手続き・課税関係、高額療養費制度の自己負担限度額、生命保険契約照会制度 |
| 主な情報源 | 国税庁、厚生労働省、協会けんぽ、生命保険協会、生命保険文化センター、e-Gov法令検索 |
| 未調査項目 | 個人年金保険の税務処理、団体信用生命保険の詳細手続き、高額療養費の2026年8月以降の見直し内容 |