概要
エンディングノートとは、自分の財産・保険・連絡先・医療や葬儀の希望などを一冊にまとめておくノート。本人が元気なうちに記入し、万一の際に遺族や関係者が必要な情報にアクセスできるようにする実用的なツールとなる。
一般的なエンディングノートは、法律上の方式に従った遺言書ではなく、それだけで相続分や遺贈を決めるものではない。財産承継に法的効力を持たせたいときは、民法の方式を満たす遺言書を別に作る。エンディングノートは、連絡先、契約の所在、葬儀の希望などを関係者に伝えるための補助資料として使う。
医療・ケアの希望も、書いて終わりではない。厚生労働省の「人生会議(ACP)」は、本人が大切にすることや望む医療・ケアを、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組としている。
選択肢一覧
エンディングノートの入手方法にはいくつかの選択肢がある。
| 種類 | 費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自治体等が配布する版 | 無料の場合がある | 配布の有無、対象者、入手方法は自治体ごとに確認する |
| 市販のエンディングノート | 商品により異なる | 書店・文具店等で選べる |
| ウェブ・アプリ版 | サービスにより異なる | 更新しやすい一方、終了時のデータ出力やアカウント承継を確認する |
| 白紙ノートに自作 | 実質無料 | 自由に書けるが、項目の漏れが生じやすい |
どの方法を選んでも記載する内容は同じ。重要なのは「書くこと」と「保管場所を家族に伝えること」の2点となる。
費用の相場
公的な全国価格統計は確認できない。無料の書式、自作、市販品、オンラインサービスがあり、費用だけでなく、更新しやすさ、保管方法、サービス終了時の取扱いで比較する。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 自治体等の書式 | 配布元に対象者・配布条件を確認 |
| 市販品 | 販売者の表示価格を確認 |
| アプリ・ウェブサービス | 利用料、解約、データ出力、死後のアクセス方法を確認 |
エンディングノートに記載した希望を法的に有効にするために遺言書を作成する場合は、別途費用が発生する。詳細は遺言書の種類と書き方を参照。
手続きの流れ
エンディングノートに決まった書式はないが、以下の項目を網羅すると遺族にとって実用性が高い。
Step 1: 基本情報を記入する
- 氏名、生年月日、住所、本籍
- 本人確認書類や年金関係書類の保管場所
- 緊急時に確認してほしい連絡先
個人番号そのものや本人確認書類の画像を、持ち出しやすいノートにまとめる必要はない。必要な書類の「保管場所」を記し、閲覧できる人を絞る。
Step 2: 財産の情報をまとめる
- 預貯金(金融機関名・支店名・口座番号・届出印の保管場所)→ 死亡後の口座凍結については銀行口座の凍結・名義変更の手続きを参照
- 不動産(所在地・登記簿の保管場所)
- 有価証券(証券会社名・口座番号)
- 生命保険・医療保険(保険会社名・証券番号・受取人)→ 詳細は生命保険・医療保険の手続きを参照
- 借入金・ローン(金融機関名・残高の目安)
- 年金(種類・基礎年金番号)
- その他の資産(貴金属、美術品、車両など)
Step 3: デジタル資産を整理する
- メールアカウント(サービス名・ID)
- SNSアカウント(LINE、Facebook、X など)
- ネット銀行・ネット証券の口座
- 有料サブスクリプション(動画配信、クラウドストレージなど)
- スマートフォン・パソコンのロック解除方法
- IDの所在、パスワード管理手段、回復手続きの確認先
パスワードをノート本文へ一覧で書くと、紛失時に複数のサービスへ侵入される危険がある。パスワード管理手段へのアクセス方法と、信頼できる人へ開示する条件を分けて設計する。デジタル資産の整理の詳細はデジタル終活の進め方を参照。
Step 4: 医療・介護の希望を記入する
- かかりつけ医の連絡先
- 持病・服用中の薬・アレルギー
- 延命治療に関する希望
- 臓器提供の意思
- 介護が必要になった場合の希望(在宅介護・施設入所など)
希望は変わり得るため、日付を付けて記録し、家族等とかかりつけの医療・ケア関係者にも共有して、折に触れて話し直す。
Step 5: 葬儀・埋葬の希望を記入する
Step 6: 連絡先リストを作成する
- 親族の連絡先
- 友人・知人の連絡先(葬儀に連絡してほしい人)
- 職場・取引先の連絡先(必要な場合)
- 専門家の連絡先(顧問弁護士・税理士・司法書士など)
Step 7: その他の情報を記入する
- 遺言書の有無と保管場所 → 遺言書の種類と書き方を参照
- 死後事務委任契約の有無と受任者の連絡先 → 死後事務委任契約を参照
- 身寄りのない方は、遺言書・死後事務委任契約・任意後見契約との組み合わせが重要 → おひとりさまの終活ガイドを参照
- ペットの引き取り先 → ペット信託・ペット後見の費用と手続きを参照
- 形見分けの希望
Step 8: 保管場所を家族に伝える
- エンディングノートの保管場所を家族に伝えておく
- 金庫や机の引き出しなど、遺族が探しやすい場所に保管する
- デジタル版の場合は、ファイルの保存先とアクセス方法を共有する
- 定期的に内容を見直し、変更があれば更新する(年に1回程度が目安)
自治体の支援制度
自治体によっては、エンディングノートの配布、講座、相談、情報登録を行っている。全国一律の制度ではないため、住所地の公式サイトや地域包括支援センターで確認する。
- エンディングノートの配布: 市区町村窓口や地域包括支援センター等で配布している例がある
- 終活セミナーの開催: 社会福祉協議会や地域包括支援センター等が講座を開く例がある
- 終活登録制度: 横須賀市の「わたしの終活登録」(2018年開始)が先駆的事例。エンディングノートの保管場所、緊急連絡先、遺言書の保管場所、葬儀の希望などを市が登録・保管し、万一の際に関係者に開示する制度
- 終活相談窓口: 地域包括支援センター等で、エンディングノートの書き方を含む終活全般の相談を受け付けている自治体がある
各自治体の支援制度の詳細は地域別情報を参照。
注意点・よくあるトラブル
- 遺言書と混同しない: 一般的なエンディングノートは遺言書の代わりにならない。財産承継は遺言書等で別に整える
- 保管場所を伝えていない: せっかく書いても、遺族が見つけられなければ意味がない。保管場所を家族に伝えておくことが最も重要
- 情報が古いまま放置される: 口座の開設・解約、保険の変更、連絡先の変更などがあった場合、ノートの内容も更新する必要がある
- 秘密情報を集約しすぎない: パスワード、暗証番号、本人確認書類の画像を一冊にまとめない。ノート本体と認証情報を分け、閲覧者と開示条件を決める
- 家族の感情への配慮: 突然エンディングノートを見せると家族が動揺する場合がある。生前整理の一環として自然な形で共有するのも選択肢のひとつ
調べてみて気づいたこと
役割を「法的な財産承継」「日常情報の伝達」「医療・ケアの対話」に分けると、エンディングノートだけに過大な役割を持たせずに済む。最初から全欄を埋めるより、緊急連絡先、重要契約の所在、医療・ケアで大切にしたいことから始め、更新日を残す方が管理しやすい。
出典・公式情報リンク
出典: 法務省「遺言書の様式等についての注意事項」(2026年8月閲覧)
出典: 厚生労働省「『人生会議』とは?」(2026年8月閲覧)
出典: 横須賀市「わたしの終活登録」(2026年8月閲覧)
出典: 個人情報保護委員会「パスワードの使い回しにご注意!」(2026年8月閲覧)
調査カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026年8月1日 |
| 調査範囲 | エンディングノートと遺言書の違い、記載項目、医療・ケアの意思共有、秘密情報の保管、自治体の情報登録事例 |
| 主な情報源 | 法務省、厚生労働省、個人情報保護委員会、横須賀市 |
| 未調査項目 | 全国の自治体エンディングノート配布状況の網羅的調査、アプリ型サービスの比較、エンディングノートの利用率に関する統計 |